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歯科口腔外科部長 太田 信介
噛み合わせに参加している親知らずは使えるだけ使って下さい。他の歯と同じように活躍しています。
ほとんどの場合親知らずは生えてこず、役に立っていません。役に立っていないだけで抜歯をした方が良いと思っているのではありません。
下の歯を思い浮かべて下さい。下の歯は右側に7本、左側に7本生えています。その後ろに親知らずがあります。"7番目の歯の後ろは赤い粘膜だよ"という人の場合は粘膜の下に埋まっています。"7番目の歯の後ろに白い歯の一部があるよ"という人の場合は一部分だけが出ています。
歯の表面を覆うエナメル質は粘膜と接していても接着しません。一部分だけが見えている親知らずの場合、粘膜とエナメル質の間に細菌が入り込める隙間があり、磨くことが出来ないためいつも細菌が溜まっていることになります。すると体調が悪くなった時に、親知らずの周囲がうずいたり、親知らずの前の歯が浮いた感じになり噛むと痛かったりするのです。この状態は深い歯周ポケットがある歯周病の様な状態といえます。
ですから親知らず周囲の骨は歯周病と同じ様に少しずつ溶けて無くなっていきます。「親知らず周囲の骨」ということは「7番目の歯を支えている骨」とも言えます。親知らずだけが影響を受けるのでしたら痛くなってから抜いても遅くはありませんが、7番目の歯を支えている骨が無くなってしまう前に役立っていない親知らずは抜いた方が得策ではないでしょうか。歯周病という病気は痛くもかゆくもないのですが、静かに静かに進行し徐々に歯の周囲の骨を溶かす慢性炎症です。
親知らずが口の中に見えない人の場合は、抜いた方が良い別の理由があります。親知らずを作った組織はエナメル質を作ったあと普通は退化して無くなります。稀に退化せずに骨の中に残り腫瘍や嚢胞(膿の袋)を作ることがあります。腫瘍や嚢胞は周囲の骨を徐々に溶かし巨大化します。痛くはないので、歯科医院でレントゲンを撮影した際、大きな病気が見つかる結果になります。
以上の様に「痛い」、「腫れた」などのわかりやすい理由とは別に親知らずはなるべく早く抜いて、7番目までの歯を守れる環境を作った方がいいと思います。
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