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リハビリテーション科部長/整形外科特任 常田 剛
「言語聴覚士」または「ST」がどのような仕事をする職業なのか、ご存知でしょうか。初めて耳にする方も多いでしょう。国家資格として制定されたのが1997年、比較的新しい専門職です。言語聴覚士について少しご説明します。
「言語聴覚士(Speech Therapist, 以下ST)」は、言語機能や聴覚機能に障害を持つ方にその機能の維持向上を図るため、検査・評価・訓練やその他の援助を行います。また、食べることの障害である嚥下(えんげ)障害にも対応しています。これらの障害を対象とするリハビリテーションが言語聴覚療法です。STは医療、福祉、教育機関などに所属しています。
言語機能のST対象は、主にコミュニケーション障害の患者様です。例えば先天性の難聴で"ことば"が習得できない、事故や脳卒中(脳出血、脳梗塞)によって脳の言語機能を司る部分に損傷を受けた、舌癌で舌切除術を受けた・・・などのケースがあります。つまりSTがかかわる患者様も、お子さんからお年寄りまで幅広い世代に渡っているのです。コミュニケーション障害は体の運動機能と違って、「外見上把握しづらい」という特性があります。それに加えて、患者様がご自身の障害や不自由さについて"ことば"で訴えることが難しいので、「見えにくい障害」ともいわれています。
当院のような病気やケガをされた直後の「急性期」病院では、患者様の多くがコミュニケーション障害である「失語症」と「運動障害性構音障害」、そして「嚥下障害」を抱えています。そのため現在、脳卒中診療科・脳神経外科に入院されている患者様を中心に言語聴覚療法を行っています。「失語症」とは脳の言語野("ことば"を司る部分)に損傷を受け、「話す」ことだけでなく、「聴く」、「読む」、「書く」機能も障害されます。症状は言いたい"ことば"が思い出せない、思ったことと違う"ことば"を言ってしまう、聴いた"ことば"の意味が理解できないなどです。「運動障害性構音障害」は発声発語器官(話すときに使う器官のことで、唇・舌など)の筋や筋を司る神経が障害され、はっきり発音されなくなった状態です。症状は呂律が回らない、声が小さい、ガラガラ声になるなどです。「嚥下障害」では食事中にむせる、食べ物をうまく噛めないなどの症状がみられます。嚥下障害は運動障害性構音障害と同時に起こることが多くみられます。
コミュニケーション障害を持つ患者様は、人間の生活の根本であるコミュニケーションがスムーズに行えないことで、心理的・社会的に受けるダメージはとても大きいと考えられます。言語聴覚療法においては「コミュニケーション障害」と関わるのみではなく、そうした障害をかかえた「人、患者様」への援助活動を行うという認識が重要だと考えています。
STは患者様、ご家族の立場を尊重し、心理的な変化を敏感に受け止めながら、丁寧にリハビリテーションを行います。
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