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リハビリテーション科部長/整形外科特任 常田 剛
「作業療法」もしくは「OT」という言葉をご存知でしょうか。よく耳にするのは「手のリハビリをする人」「お箸や字を書く訓練」「絵画や手芸を使ったリハビリ」...といったところでしょうか。どれも正解ではありますが、これらがすべてを言い得ているというわけでもありません。作業療法とは一体どういう分野なのか、少しご説明いたしましょう。
まず、作業療法の対象となる患者さんは、大きく2つの領域に分けられます。ひとつは脳卒中や関節リウマチ、骨折や外傷などの"身体の病気"、もうひとつは統合失調症やうつ病などの"心の病気"です。身体の病気に対する作業療法に限定すれば、患者さんの数が最も多いのが脳卒中(脳出血や脳梗塞)です。具体的には、脳卒中の後遺症である片麻痺(半身の手足が麻痺する)を中心に、失認症(例えば、目が見えないわけでもないのに左側にあるものを見落としてしまう左半側無視など)や失語症(言葉がうまくしゃべれない、人の言うことが理解できないなど)をはじめとするいわゆる高次脳機能障害の患者さんも対象としています。
次に、「作業療法」でいうところの「作業」とは、単に手工芸にとどまらず、日常生活活動(食事や着替え、入浴など)、仕事、余暇活動(趣味、スポーツなど)その他、私たちが生活する上で行うあらゆる活動を含んでいます。その意味においては「作業」を「生活」という言葉に置き換えてもいいかもしれません。そこで、私たちが日々行っている生活活動を考えてみますと、「手」を使わない活動を挙げることはいささか困難に思えます。例えば"箸と茶碗を持つには?""ハサミを使って紙を切るには?""上着のボタンをかけるには?"...すべて「手」それも「両手」を使います。やはり「作業療法」と「手」は切り離せない関係にあるというわけです。
したがって、病気やケガなどによってこれらの「作業」を行うにあたり、何らかの障害を持った方たちの"手"助けをするのが「作業療法」であり「作業療法士」ということになります。ですから当然、上手く食事ができるよう箸の使い方の訓練をすることも、手先の動作訓練としてだけではなく趣味や気晴らしの目的で手工芸を取り入れることも、「作業療法」として立派に成立します。さらに、片麻痺ということで考えますと、利き手に重篤な後遺症が残ってしまうこともあり得ます。そのような場合には非利き手を大いに活用するため「利き手交換」を行うことがあります。また、握る力が弱い方には握りやすいようにスプーンの握り柄を太くしたり、片手しか使えない方には食器を固定するためにすべり止めのついた皿を使う等、道具に対して工夫を施すこともあります。このように、作業療法士は「生活障害を少しでも軽減する」ことを目的とし、そして「生活する手」という観点を大切にしながら、患者さんに寄り添ったリハビリを行います。
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