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リハビリテーション科部長/整形外科特任 常田 剛
皆さん、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という舌を噛みそうな病名を少なくとも一度は見聞きしたことがあると思います。今回はこの骨粗鬆症について、リハビリテーションの立場からお話し致します。
骨粗鬆症と聞くと、皆さんはどの様な印象をお持ちでしょうか?高齢者の病気や症状とお考えの方が多いのではないでしょうか?間違いではありませんが、正解とも言えません。WHOでは「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義しています。年代別の有病率でみると大部分は70歳以降ですが、実は40歳代から診断されている例もあります。また骨粗鬆症という名前を聞いても、「がん」や「脳卒中」と比べると、さほど大したことは無い、と思われる方も多いのでは無いかと思います。痛い訳でもなく、麻痺が出る訳でもなく比較的無症状な場合が多いため軽視されがちです。しかし、それはとんでもない間違いです。変形性関節症に代表される関節疾患や転倒による骨折は骨粗鬆症を背景としており、実は介護保険における要支援・要介護の比較的上位にランクされています。つまり、骨粗鬆症を放置しておく事は得策とは言えません。現在日本には推計1,280万人もの骨粗鬆症患者または疑われる方がいると言われています。また、過去に大腿骨近位部(大腿骨の付け根)骨折を経験された方でも、骨粗鬆症治療を受けている方はその内20%程度と非常に少ないのが現状です。
では、実際自分が骨粗鬆症なのかどうか知りたい場合はどうしたら良いのでしょうか?確実なのは、かかりつけ医に相談する事になりますが、そうそう受診するわけにはいきません。そこで、御自身で簡単に判断の目安となる指標があります。以下にご紹介しますので、参考にしてください。
①計算による判断(目安)
閉経後の方に用いる計算式です。(体重-年齢)×0.2の値が「-4」未満となる場合に、「骨粗鬆症の疑い」の確率が高くなります。
例(体重50㎏・年齢75歳):(50-75)×0.2=-5 と「-4」未満になり、
「骨粗鬆症の疑い」の確率は高くなります。
②姿勢による判断(目安)
壁に背を向けて立ち(踵は壁に接触させる)ます。その際、後頭部が壁に接触可能か否かをみます。接触が困難な場合に「骨粗鬆症の疑い」の確率が高くなります。
次に、骨粗鬆症に対して比較的導入しやすいリハビリテーション(骨密度の改善・バランス能力向上等)で幾つか代表的な運動をご紹介します。
①歩行などの動的荷重運動
歩行運動は比較的リスクが低く、大腿骨の付け根の骨密度の上昇をもたらす運動として推奨されています。運動量は、1日8,000歩を週に3日以上を実施する事が望ましいようです。
②立位での踵上げ運動
いわゆるつま先立ち運動です。基本的には毎日50回程度を行いましょう。骨密度の上昇は無いものの、維持効果はあることがわかっています。
③ダイナミックフラミンゴ運動
この運動も動作自体は非常に簡単です。いわゆる片脚立ちのことです。1日3回を1回に付き1分間左右に実施します。可能であれば両手を腰に当てて行います。身体が不安定な場合は、固定物に摑まっても結構です。参考までに、1分間の片脚立ちで荷重している大腿骨の付け根に加わる負荷量は「53分間の歩行で得られる負荷に相当する」との報告もあります。
いずれの運動も、安全に継続して実施する事が肝心です。運動をすることによって怪我をしては元も子もありません。
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