認知症で「困った症状」はなぜ起こる?

精神

精神神経科 部長 古田 龍太郎

認知症で「困った症状」はなぜ起こる?

令和の時代となり、「人生100年」というのもあながちオーバーでなくなってきた昨今、長生きすればするほど「認知症」にり患するリスクを考えざるを得なくなっています。認知症とは、「もの忘れ」を始めとした「中核症状」が特徴の病気です。もの忘れがある程度以上強まると、日常生活の様々な場面で支障をきたします。こうした「記憶」や「認識」と言った、われわれが日常生活を送ることを可能にしている頭の働き、それを「中核症状」と言います。そして、認知症でご本人や周りの方がたいへんな思いをすることになる症状として、「中核症状」以外に「BPSD(認知症の行動・心理症状)」があります。「徘徊」や夕方になると人が変わったようになり「家に帰る」と言い、ご自宅を出て行こうとする「夕暮れ症候群」が代表です。

こうしたBPSDは原因や機序は様々ですが、大きく言って、「認知症によって脳の機能が低下した」ことが背景となっています。そして、「その方の、元々の性格や特徴が顕著になったものがBPSDとしてあらわれる」ことも少なくありません。

現在の医療では、こうしたBPSDに対して、少量の精神科のお薬、とくに少量ではありますが、「鎮静剤」に分類されるお薬を使うことがスタンダードになっています。わたくしもそれを使うことをお勧めすることは少なくありません。「少量の鎮静剤」も上手に使えば非常に有効な場合があります。しかし、「上手に使わないと」すなわち、「可能な限り少ない量でとどめておかないと」眠気が一日中続いたり、転んでしまったりすることを引き起こしかねません。しかし、この「元々の性格や特徴が顕著になったBPSD」を和らげる手段として、こうした「少量の鎮静剤」以上に、漢方薬が効果を示す場合があります。「認知症」の方にお勧めされる漢方薬で代表的なものに「抑肝散」があります。抑肝散はおもに「イライラしたり」「怒りっぽくなっている」状態を和らげる効果が知られています。では、「夕暮れ症候群」に対してはどうでしょうか?残念ながら抑肝散ではさほど効果が得られないことも多いのではないでしょうか。漢方薬で、とくに精神的な症状に効果のあるものは他にいくつもあります。当院精神神経科では、認知症の方のBPSDに対して、その方の体質や症状を鑑みて、漢方薬をお試しいただくことも患者さんやご家族に提案しております。
page
top