使うとたまる筋肉"貯筋"

麻酔科

麻酔科 部長 紺崎 友晴

使うとたまる筋肉"貯筋"

手術前に麻酔の説明をしていると、しばしば「高齢で体力が落ちていますけど、手術に耐えられますか?」と聞かれることがあります。そもそも、体力とは何でしょうか。

体力は、運動するための「行動体力」と健康に生活するための「防衛体力」に分けることができます。手術の際に必要な体力は「防衛体力」のほうです。

ですが、スポーツを始めてから風邪をひかなくなったという人もいるように、「行動体力」を高めると「防衛体力」も高まることが明らかになっています。ざっくり言うと、やや早歩き、自転車、階段をゆっくり上がることができるなどの運動強度があると手術に耐えられる「体力」があると言われています。まずはこれらができる「体力」を維持してください。

また手術が終わった後は安静が必要な期間もありますし、発熱などで活動は低下します。入院環境そのものも活動量を減らします。1~2日の安静で1%の筋肉量が低下することがわかっています。これは加齢での筋肉量低下の1年分に相当しますので、1~2日の安静で筋肉は1年分の年を取ることになります。ですので、手術前にはぜひ"貯筋"をしてください。

貯筋をするためには運動です。公益財団法人 健康・体力づくり事業財団では貯筋運動プロジェクトとして貯筋のすすめをしています。動画もありますので参考にして貯筋運動をやってみましょう。簡単な運動に見えますが、日ごろ運動習慣がない方にとっては非常に大きな意味を持ちます。余裕がある方は強度を高めてもよいです。

また筋肉を増やすためにはたんぱく質が必要です。65歳以上では体重1kgあたり1.0g以上、できれば1.5gのたんぱく質を摂取することが望ましいとされています。お魚や卵、大豆などをしっかり摂りましょう。牛乳やお肉は脂肪分が多いので摂りすぎには注意しましょう。食事で摂取が難しい人はサプリメントを活用してください。BCAAやロイシンが豊富な製品を選ぶとよいでしょう。食事制限がある病気もありますので、不安な方は主治医に相談してください。

23日では大きな変化は出ませんが、1週間以上継続すると高齢者や体力が低下した方には目に見える変化が表れるはずです。

手術がうまくいくかは外科の先生や麻酔科だけで決まるのではありません。患者さん自身の"貯筋"で「体力」をつけて一緒に病気を乗り越えましょう。
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