健康医学センター 部長 真田 治人
検診などで、萎縮性胃炎という言葉を聞いたことがあるでしょうか?慢性胃炎という云いかたで表現される場合もあるかと思います。萎縮性胃炎は、主に、幼少期のピロリ菌感染が原因となって、長い年月を経て、気付かないうちに発生することが多いと考えられております。胃の不快を感じる方もいらっしゃいますが、自覚症状なく、特に困ったこともなく過ごされる方も多くいらっしゃいます。そのまま何の弊害もなく、一生を過ごされれば、放置してよいのかとも思われますが、この状態は胃がんの発生とも関係しております。
ピロリ菌の変化(胃の萎縮)が進むにつれ、胃がんの発生率が増加することがわかっています。ピロリ菌の治療によって、がんの発生率の抑制も期待されますが、ピロリ菌未感染の方に較べると胃がんは発生しやすいです。統計の解釈が難しいですが、萎縮性胃炎が進んで、ピロリ菌が自然に消えた方は、最も胃がんのリスクが高いとされています。
このような話をすると、ピロリ菌がいるととんでもないような印象を受けますが、所謂、団塊の世代以上の年代の日本人では、半数以上の方がピロリ菌の感染歴があるだろうと云われています。ピロリ菌の感染歴のある方皆が胃がんになるわけではありませんし、普通に暮らしていけます。それより若い世代は、ピロリ菌未感染で、萎縮性胃炎のない方が多くなり、胃がんの発生率も減少傾向です。
2013年から萎縮性胃炎の方のピロリ菌治療が広く、公に、認められるようになり、除菌治療済の萎縮性胃炎の方も多くなりました。内視鏡検査で、萎縮性胃炎のある方は、ピロリ菌を調べて、可能であれば、ピロリ菌治療。そのうえで、胃がん検診の継続が勧められます。
※ピロリ菌検査は、息の検査、便の検査、血液の検査などいろいろありますが、一つの検査で断定することは難しい場合があります。必要に応じて、複数の検査など、担当医師と相談して、受けてください。
※胃がん検診の適正間隔は、結論がありませんが、萎縮性胃炎の進んだ方は、1年1回を勧めることが多いです。
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