健康コラム

放射線検査による医療被曝の影響は具体的にどのぐらいなのか?

放射線診断科

放射線診断科 部長 福島 徹

放射線検査による医療被曝の影響は具体的にどのぐらいなのか?

医療被ばくの量に法的な制限はありませんが、検査を受けることによるメリットと、被ばくや薬剤の副作用などによるデメリットをはかりにかけて、メリットが充分に上回ると判断された場合にのみ検査がおこなわれます。では、検査による被ばくの量と、それによるデメリットとはどのくらいなのでしょうか。

放射線を浴びることにより、体にどのくらいの影響があるのか、という目安として、シーベルト(Sv)という単位を用います。通常はSv1000分の一のミリシーベルト(mSv)を使用しています。


普通に生活していても、私たちは微量の放射線を浴び続けています。これを自然被ばくと言い、日本では年間で2mSv程度です。半分は食事から、のこりの大半は空気中の物質や地面からの放射線です。宇宙からの放射線も含まれていますが、地球の大気により減衰され、年間0.3mSv程度です。ちなみに宇宙ステーションでは、半年の滞在で100200mSvと、地上の100倍以上の被ばく量になります。人類が宇宙飛行を始めてから、500人以上の宇宙飛行士が、延べ1000回以上も宇宙へ出ていますが、今のところ一般人と宇宙飛行士で、ガンの発生頻度に統計的な差はないといわれています。

検査による医療被ばくは、件数の多いCT検査による割合が多いです。一回のCT検査で大体10mSv前後です。レントゲン写真では、CT検査の100分の一程度です。核医学検査では、使用する薬剤にもよりますが、大体110Svとなっています。

放射線が細胞を直接障害する(確定的影響と言われています)のは、一度に大量の被ばくがあった場合とされています。生殖腺や骨髄などが放射線感受性の高い臓器とされ、精巣への100mSvの被ばくで一時的な不妊を生じたり、骨髄への250500Svの被ばくで、白血球減少がみられます。

放射線により細胞内の遺伝子(DNA)が損傷されガンを引き起こすリスクは、確率的影響と呼ばれ、被ばく量が増えればその分だけガンを生じる可能性が上がっていきますが、これも100mSv以下では他の要因に隠れ、ほぼ影響なしとされています。年に数回CT検査を受ける方もいらっしゃいますが、同じ線量でも一度に被ばくするのに比べ、分散して被ばくした場合リスクは下がります。

一説によれば、運動不足や塩分過多などの生活習慣によるガンのリスクは、医療被ばくによるガンのリスクを上回るとされています。生活習慣を改善すれば、病気になる可能性も低くなり、検査による被ばくも減るため、一石二鳥と言えるでしょう。




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