健康コラム

組織のゆくえ~組織診断への道

病理診断科

病理診断科 医長 信太 昭子

組織のゆくえ~組織診断への道

多くの方々は「病理」という言葉になじみがないのではないでしょうか。病理診断科とは何をしているところなのでしょうか?患者様より採取された組織や細胞から病気の診断をしています。主に ①組織診、②細胞診、③術中迅速診断、④病理解剖の4つを行っています。今回は①組織診について紹介します。例えば大腸内視鏡検査を受けてポリープが見つかり、切除されました。そのポリープの行方を見てみましょう。

ホルマリンにつけた状態で病理部に提出されます。ホルマリン固定と言い、組織が腐敗せず形状が保たれるようにしています。

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約20時間漬けます。

次にポリープの形状を確認し大きさを測り、大きい場合はカットして、標本作製用の容器(カセット)にいれます。

【標本作成用カセット】

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組織をパラフィンで固めるために、組織に含まれる水分を除去、脂質も除去してパラフィンを組織に浸透させます。パラフィン浸透装置という機械で行います。

パラフィンが浸透した組織をパラフィンに包埋してブロック状に固めます。


byouricolumn3_20250707.png溶解したパラフィンに包理

ミクロトームという専用のカッターで組織を薄く削ぎ、ガラスに貼り付けます。

byouricolumn4_20250707.png切片の厚さは3~4μm、熟練の技。

【ガラスに貼り付けた組織切片】

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基本のHE染色では、ヘマトキシリン液(青紫色)続いてエオジン液(オレンジ色)に漬けることによって細胞の核が青、細胞質がピンク色に染まります。

【自動染色機】

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カバーガラスで覆い、プレパラート標本が完成します。

【HE標本】

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このプレパラート標本を顕微鏡で観察し「組織診断」を行います。正常の組織と比べて変わったところがないか、腫瘍があるとしたら良性か悪性か、どの種類の腫瘍なのかなどを判定します。今回は大腸のポリープなので、腺腫、腺癌、過形成性ポリープなどが考えられます。低倍率で全体像や腺管の構造を観察し、倍率を上げて細胞や核の状態を観察します。診断は良性の腺腫でした。

【大腸ポリープの組織像。大腸腺腫 】

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病理診断報告は電子カルテを通じて担当医師に伝えられ、患者様のもとに届きます。今後の経過観察や治療方針の検討に役立てられています。あまり知られていない我々の仕事ですが、毎日縁の下から病院を支えています。どうぞよろしくお願いします。

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