健康コラム

自助具(じじょぐ)について(食事編)

リハビリテーション科

リハビリテーション科 寺地 愛

自助具(じじょぐ)について(食事編)

作業療法(OT)は、身体または精神に障害のある人、又はそれが予測される人に対し、日常生活動作の獲得を図るため、機能の回復・維持を促す作業活動を用いて治療を行います。当院では、"脳梗塞や脳出血などの脳卒中"、 "パーキンソン病などの神経変性疾患"、"頚椎症性脊髄症などの脊椎疾患"、"上肢などの骨折"、"乳がんなどの悪性腫瘍"など、様々な病気の人に対し作業療法が介入しています。具体的には、食べる、歯磨きをする、トイレに行く、着替える、入浴をするなど、日常生活での応用的動作能力の向上を目標としています。


今回は、身体に障害をもつ人が日常生活動作をより便利に行えるように工夫された道具である、「自助具」の話をします。両手での動作が困難な人、細かい手作業が困難な人、疼痛や関節の動きに制限がある人などは、自助具を用いると生活がしやすくなります。自助具は色々ありますが、第一段として日常生活動作の中で「食事」に着目し、関連する自助具をご紹介します。食事は、人間にとって健康の保持及び増進、病気からの回復のために必要不可欠で、また楽しみの要素も含まれます。「The company makes the feast」「鯛も一人はうまからず」ということわざがあるように、大勢で一緒に食べることで美味しさや幸福が増し、コミュニケーションも充実させる機会にもなります。食事動作を工夫すれば、介助なしでも食べることが可能になるので、状態によっては早期から自立しやすい動作の一つと言われます。以下、どのような自助具があるのかを具体的にご紹介しましょう。

○スプーン・フォーク:

握力が弱い場合、握り易く太い柄を用います(図1)。手首の調節が困難な場合には、スプーンの首部分をねじ曲げて使用します(図23)。また、親指・人差し指・中指で支えることが困難な場合は、手の平から手の甲を覆うように固定する「スプーンホルダー」もあります(図45)。

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○箸

手指の操作性に改善がみられたり、利き手交換が必要な場合は、箸の練習を行います。箸はグリップ付きタイプ(67)や補助リング付きタイプ(89)があり、右手用・左手用に分けられています。

その他、ピンセットタイプ(図1011)もあります。

どのタイプも箸先に滑り止めがついており、箸先がクロスしないようになっています。

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○食器

茶碗など底部分の面積が小さい食器は、注意しないと器を倒してしまう恐れがあります。滑り止め付きの皿(12)や、すくいやすい皿(1314:片側に傾斜していて底が深く内側に反っています)、滑り止め食事用マット(15)などを用いることで安全に食事ができます。

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食事動作に関わる作業療法では、上肢機能(どのくらい腕や指先を動かせるのか)を評価し、スプーンや箸を口元へ近づける練習や皿を反対の手で固定する、茶碗を空間で保持するといった練習を実施しています。また、実際の食事場面で姿勢などを評価しながら、食べる際のコツや注意事項なども指導しています。具体的には、誤嚥を防ぎ良い姿勢を保つため、仙骨座り(椅子に浅く座り背もたれに寄りかかる座り方)や左右へ傾いた姿勢になっていないか、首が伸びていないかなどを確認します。一人ひとり、病気による症状や回復の程度などが異なり、経過中に自助具の必要度も変わるので、再評価が必要です。私達は、作業療法を通して皆様に適した自助具を選択し、より充実した食生活の一助となることを目指してゆきたいと考えています。


参考文献:国際福祉機器展 H.C.R2007 福祉機器選び方・使い方2007 P33~40
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