リハビリテーション科 認定言語聴覚士(失語・高次脳機能障害領域) 河野良介
4月25日は「4(し)2(つー)5(ご)」=「失語」と読む語呂合わせから失語症の日です。
失語症は、脳卒中などの大脳損傷により、「ことばを聞く・読む・話す・書く・計算する」等、全ての言語側面に何らかの能力低下があらわれる状態を指します。厚生労働省によると失語症の方は、国内に20〜50万人いると推計されています。2026年4月1日より高次脳機能障害者支援法が施行されましたが、その中で失語症も高次脳機能障害の中に明示されており、今後失語症の方への支援が期待されています。
失語症になると、言葉の引き出しがうまく開けられない、言葉が分からない外国にいるような状態となります。
具体的には、
・伝えたい言葉が浮かんでこない。思ったことと違うことを言う。
・周りくどい言い方になる。
・同じ言葉がうまく言えたり言えなかったりする。
・耳は聞こえているのに相手の言っている言葉の意味が理解できない。
・書かれている文字の内容が分からない。
・文字を書くことができない。書き誤りがある。
・パソコンやスマートフォンに文字を入力することが難しい。
といった症状が挙げられ、コミュニケーションを取ることが難しくなります。
一方、失語症になっても基本的には人格や判断力、記憶力も大きく低下していません。
次に失語症の方とのコミュニケーション方法のポイントを以下に記載しましたので参考にしてください。
<失語症の人に話しかけるとき>
図1
図2
・テンポが早い会話にはついていけないことが多いので、短くわかりやすい言葉で文節(もしくは単語)ごとに区切って、ゆっくり・はっきり話しかける。
・一度言っただけではうまく伝わらないことがあるので、もう一度繰り返して伝えてみる。
・周囲が騒々しいと理解しにくいのでテレビなどは消して話しかけてみる。
・分かりやすい言葉に置き換えて伝えると伝わりやすい。
例:「右折してください」⇨「右に曲がってください」
・お互いの表情が分かるような位置や視線で話す。身振りも使用すると伝わりやすい。
・話題を急に変えない。変える時は身振りや文字などで示すと良い。(図3)
図3
・「はい」「いいえ」(頷き・首振り)で答えられる質問をする。下図のように指差ししてもらうのも良い。(図4)
図4
<失語症の人が話すとき>
・なかなか言葉が出てこないことがしばしばあり。先回りしてどんどん話しかけてしまうと喉まで出かかった言葉を飲み込んでしまうこともあるので、少し待ってみる(15秒ぐらい)。
・それでも言葉が出てこない時は、大きなカテゴリー(例:食事のこと、リハビリのこと、家族のこと?)から小さなカテゴリー(食事であれば味、形、量のこと?)などのように狭めて尋ねていくのが基本です。
・漢字よりも仮名が苦手になる方が多く、言葉がうまく出ない時には、50音表(図5)の使用を控える。会話ノート(コミュニケーションノート、会話支援ノート)など(図6)を使用して尋ねてみる。
図5
図6 コミュニケーションノート(会話支援シート)例
最後に、失語症の方が話していることを理解できない時もあります。いろいろな方法を試しながら考えても理解できなかったら、その時は分かったふりをするよりも、「ここは分かったけど、この先が分からない」と伝えて一緒に残念がりましょう。
その思いを知りたいという気持ち・姿勢は失語症の方に伝わるはずです。
当院言語聴覚士も可能な限り、失語症者の方に寄り添う気持ちを持ってリハビリに取り組んで参ります。
参考文献:
失語症の人と話そう 失語症の理解と豊かなコミュニケーションのために
当院について